2019/05/19

ベートーヴェンのピアノ・ソナタ聞き比べ  「悲愴」「テンペスト」「熱情」のNo. 1ピアニストは誰か?






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ベートーヴェン
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楽聖ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェンの代表曲といえば、「ジャジャジャーーン」の冒頭で有名な交響曲第五番・運命を上げる人も多いでしょう。

激情家と評される芸術家に相応しい、感情の高ぶりを音符に乗せた一曲と言えるでしょう。






しかしその一方で、ピアノソナタ第14番・「月光」の第一楽章のような優しい曲も人気があります。

この激しさと優しさが同居する名曲には、ベートーヴェンの最高傑作とも評されるピアノソナタ第23番・「熱情」が上げられます。


静けさから始まり、急転直下・動に移行するこの楽曲は、難聴に苦しんだ希代の芸術家が、それを突き抜けて歓喜に至った過程を表しているようで、私にとっても思入れのある一曲です。

ベートーヴェンは20代後半から難聴に悩まされ、31歳の時に、弟たちに書き送った「ハイリゲンシュタットの遺言」で知られるように自殺まで考えました。

この難聴がどの程度のものであったかは定かではないようですが、音楽家にとって僅かな音の違いが分からないだけでも致命的であり、ましてや繊細さを追い求めるストイックな芸術家であれば、創作活動に影響を及ぼしたことは間違い無く、遺書の文面を読む限り、苦悩は相当なものだったと思われます。

しかしベートーヴェンは、自身に訪れたこの非情とも言える運命の首根っこを掴み、締め上げ、その負のエネルギーを抱きとめ、それを正のエネルギーに転換させ、無上の喜びに至るまで自らの精神を高みに引き上げました。

私自身も、幼少期のある出来事から長い悲嘆の時期が続き、その果てで歓喜を掴みとった経験があります。


もちろん私と比較することはできませんが、ベートーヴェンの楽曲には、この芸術家の苦悩した想いが、それらを乗り越えた先に見えた地平が、身体中に行き渡る精神の昂りが表現されており、それらが敏感に伝わってくるのです。

他の有名な作曲家で、「詩人の恋」などから最も情感豊かと評されるシューマンや、変幻自在に音を操る天才・モーツァルトなどと比較しても、やはり私はベートーヴェンに惹かれ、特にピアノ・ソナタがその特質を顕著に表しているように感じられるのです。

そんなベートーヴェンのピアノソナタで、どのピアニストが、忠実にこの作曲家の想いを表現しているかを私は探し求めました。


ポリーニ・ホロヴィッツ・リヒテル・ルービンシュタイン・バックハウス・ゼルキン・グールド・ギレリス・アシュケナージ・ミケランジェリ・辻井伸行さん


といった名だたるピアニストが演奏した中から、特に際立った演奏と感じた楽曲とピアニストの組み合わせを、私が独断と偏見で選びたいと思います。


ピアノソナタ第8番 「悲愴」 ウラディミール・ホロヴィッツ


ピアノソナタ第17番 「テンペスト」 エミール・ギレリス

ピアノソナタ第23番 「熱情」 スヴャトスラフ・リヒテル


バッハのゴールドベルクで有名なグレン・グールドも何曲か演奏していますが、我流すぎて別の曲に変わっています。

グールドが普通に「悲愴」を弾いていれば、ホロヴィッツに匹敵していたはずたど確信できるくらい、その変則的な音からも奇才の片鱗を感じ取れるのですが、それが返す返すも残念に思えます。

楽曲のどの部分に感応するかは、鑑賞者によってそれぞれ違いますので、誰の感性が正しいとは言えませんが、リヒテルの熱情などは、誰しも認める王者の風格とも言える堂々たる演奏でしょう。

プロのピアニストにとっては、自分の思入れの軽重、練習量の多寡などから、得意不得意にバラツキがあるため、自分の好きな楽曲にとってのベストプレイヤーを探し当てると、クラシック鑑賞がより奥深く充実したものになるでしょう。

しかし、本当に素晴らしい音色を奏でるピアニストは、初めて発表会の舞台に立ったチビッ子たちであることは間違いありません。

緊張の面持ちを隠せないなかで、それでも真剣に鍵盤と向き合い、練習の成果を披露する姿に、特に親御さんであれば、ハラハラと見守りながらも、そこから会場に響き渡る初舞台の音色こそが、例え拙くとも最高の演奏であり、最高のピアニストと言えるでしょう。






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