2019/02/25

やり抜く力「GRIT」や諦めない力を生み出すものは原体験である







起業家 やり抜く力 GRIT


mohamed HassanによるPixabayからの画像 


先日YouTubeを見ていて、非常に興味をそそられる動画を見付け、じっくり見いってしまいました。

その動画は、MBAで有名なグロービス経営大学院が配信していたもので、Forbes JAPANのCEOで編集長の高野真さんが司会を務め、何人かの投資関係者が集い、ある題材について議論を交わしていました。

その議題とは、


投資家がリスクを取っても投資したい「起業家」とは?


でした。






つまりここで行われていた話とは、目利きのプロがどんな人間に賭けたいかということです。

それは、馬主がサラブレッドを競り市で落札するのと同じですが、起業家に求められるのは血統ではなく、同じ中身でも人間性です。

若駒を道楽で選ぶ馬主の場合、瞳が気に入ったとか、瞳が選ぶよう訴えていたなどの逸話がありますが、投資家が起業家を選ぶ場合、君の眉の形が気に入ったとか、君のおデコの角度が気に入ったとはならないはずで、ここで重要なのは、商品や市場もさることながら本人の資質です。

昨今は、学生起業家との言葉を耳にするぐらい、起業は珍しくなくなりましたが、それでも会社を一から起こして軌道に乗せるのは容易ではなく、知力・体力・精神力といった総合力が必要となります。

では、それらに秀でた人間を数多く見てきた目利きのプロが、一体何を判断基準にしているかですが、参加者の全員が、ある共通の言葉を口にしていました。


執着心がある人(谷家衛さん) 


やり続ける理由が腹の底にある人(小林清剛さん)


やりきり力(堤達生さん)


折れない力(各務茂夫さん)


つまり、


最後までやり抜く力


です。

いまアメリカでも、grit(やり抜く力)という単語が脚光を浴びています。

ペンシルベニア大学の心理学教授・アンジェラ・ダックワースさんが、やり抜く力を科学的に解明しようとした書籍は、ハーバード × オックスフォード × マッキンゼーとブランド力のある横文字が躍り、日本でも大々的に取り上げられました。

日本で議論される「やり抜く力」とは、精神論である努力や根性論に還元されてしまう感があるものの、近頃は科学的に議論されはじめている資質で、ここに来て何やら注目されているようです。


では、やり抜く力は一体どのようにしたら獲得できるのでしょうか?


書籍「やり抜く力」では、その資質は先天的ではなく、情熱)(粘り強さ)が元になっていると結論付けているものの、どうしたらそれを得られるかについては、何やらはっきり示しておりません。

彼女が出演しているTEDでは、正直分からないと述べているように、解明できなかったと思われます。

では、どうしたらこの情熱と粘り強さを後天的に獲得できるのでしょうか?

そのヒントとなる内容を、この動画に登場していた小林さんが語っています。

それは、


起業家はテクノロジーをマネタイズするのではなく、自分が作りたい未来に対してテクノロジーを利用する。


という言葉です。

これは、起業の先にある目的が、IPO(株式新規公開)やM&A(合併・買収)といったexit(資金回収)ではなく、自分が実現したい世界である、ということに他なりません。

イグジットが目的の起業家と、自分が思い描く世界の実現を目指す起業家は、共に起業を手段としていますが、目的は真逆です。

この後者こそが、やり抜く力を備えているのです。

前者の起業家とは、表向きの動機として、社会の改善や貢献を語るかもしれませんが、その裏に隠れているのは、有名になりたいとか、親に成功を駆り立てられてきたとか、金儲けがしたいなど、外的な動機が多いかもしれません。

もちろん、100%金や名声といった功利的な理由で起業するケースは少なく、動機とは、恐らく本人も分からないほど複雑に絡み合っているはずですが、外的な動機が比重として大きいケースは、心の奥底で夢中になれないものを事業として行っているため、正真正銘のハードシングスには耐えられないでしょう。

そして、後者の起業家が抱く目的とは、まさに世の中を変えることであり、その欲望が大きければ大きいほど、その動機を支える裏には、心に刻まれた強烈な原体験があるはずなのです。

例えば、クラウドファンディングの「CAMPFIRE」を創業した家入一真さんは、居場所のなかった学生時代にネットによって救われたという経験があり、また画家としての一面を持つ彼は、現実世界で開いた個展ではまったく見向きもされなかった作品を、ネットで公開したところ大きな反響があった経験をしており、このウェブの世界に可能性を感じる原体験を持っています。

つまり家入さんは、この原体験で得た救いや喜びからネットの世界に身を投じ、さらにはこのネット世界を通じ、現実世界や人々を変えたいという想いに繋がったのだと思われます。

それが、ネットを活用した都知事選であったり、お金がなくともネットの力によって人々の善意を結集し、夢を実現できるクラファンの事業に形を変えていったのだと思われます。

こうした原体験は、自分の腹の底に動機があるため、間違いなく「やり抜く力」を備えています。

ただし、このように正の原体験ではなく、負の原体験をやり抜く力の原動力とする起業家もおり、これは外的な動機と密接に絡んでいるケースが多く、負が正に転換されない限り、正真正銘のハードシングスには耐えられないでしょう。

また、単純に冒険家の資質を備えた者で、先の分からないことやトラブルに楽しさを感じ、それらの突破に興奮を覚える起業家もいるでしょう。

そして、その感覚が桁外れに大きければ、正真正銘のハードシングスに耐えられるでしょう。

起業とは、冒険のように大袈裟な準備をしなくてもできるリアルなサバイバルですが、功名心のある冒険家も当然いるように、ここでの資質とは、危険に身を晒すことにワクワクする感情を抱き、純粋にそれらからの脱出を楽しむ者のことです。

決して功名心が悪い訳ではなく、むしろ若い頃は、他人からよく見られたいなどの感情が先走るのは普通ですが、功名心といった外的な動機は、得てして細部や人の見ていないところで手を抜く要因となり、時としてそれらが致命傷となるでしょう。

また功名心といった外的な動機は、自分ではなく外の目が基準となっており、行為そのものが褒美である内的な動機には原動力としてはどうしても勝てず、更にはその行為の先に大きな目的がある人間には、どう足掻いても「やり抜く力」では勝てないでしょう。

例えば、負け戦で馬上の将軍がどこかへ逃げ延びなければならないとします。

このとき、目の前に人参をぶら下げなければ走らない馬と、人参がなくとも楽しんで走る馬と、さらにはご主人を必ず落ち延びさせるという使命を持った馬を比較すれば、どれが継続力という「やり抜く力」を備えているかは明白です。

ではここで私の考えを整理すると、やり抜く力を備えた起業家とは、


1・強烈な正の原体験を持つ者。

2・強烈な負の原体験が正に転換した者。


3・桁外れの危険に身を晒し、その突破に喜びを覚える者。



であり、3は除外しますが、1と2においては、繊細な感性を持つ者が、己の精神を揺るがす体験をしたときに、自分の生きる道を身体で理解し、その場やその後に、大きな使命を抱くことで誕生するのではないかと思います。

繊細な感性とは、3と同じく先天的な資質が多分に影響するような気がしますが、育むことはできるでしょう。

それは別の機会に考察するとして、やり抜く力とは、強烈な原体験を持つ者が、この道以外に自分を活かす道はないと悟り、さらにその先に大きな目的を持って取り組んだとき、発生するものだと私は考えます。








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