綠釉騎馬人物紋壺 漢朝
撮影者 Hiart CC0 1.0
後漢書といった中国の文献は、古くから大陸文化を取り入れてきた日本に、良くも悪くも多大な影響を及ぼしてきました。
その多くが故事成語となり、我々日本人の骨格を形作ってきました。
本記事は、戦後の歴代首相指南役を務めたとされる、陽明学者・安岡正篤氏が生きる指針として説いた「六中観(りくちゅうかん)」でも引用されている、後漢書・方術伝費長房からの故事成語「壺中天有り」について紹介していきます。
安岡氏の説いた六つの心構えは、
忙中閑有り(ぼうちゅうかんあり)
苦中楽有り(くちゅうらくあり)
死中活有り(しちゅうかつあり)
壷中天有り(こちゅうてんあり)
意中人有り(いちゅうひとあり)
腹中書有り(ふくちゅうしょあり)
であり、「死中活有り」という言葉は、
絶望的な状況の中で、生きる道を見出そうとすること
難局を打開するため、あえて危険を冒すこと
の意味で、後漢書・公孫述伝に記載のある、
男児當死中求生 可坐窮乎
の意味で、後漢書・公孫述伝に記載のある、
男児は當に死中に生を求むべし、坐して窮す可けんや
男児たるものまさに死中に生を求めるべきであり、坐して窮地に陥るべきではない
引用参考文献 全訳後漢書〈第11冊〉列傳(1) 汲古書院 渡邉 義浩 堀内淳一
から来ている有名な成句ですが、今回は、
壺中天有り(こちゅうてんあり)
を取り上げたいと思います。
出典は後漢書の方術伝費長房です。
後漢書 南宋紹興刊本 范曄 作
Wikimedia Commonsより
Wikimedia Commonsより
後漢時代、汝南の費長房は市場の役人をしていた。彼が管理する市場の中に薬売りの老人がいて、店先に一つの壺をぶら下げていた。この老人は、市場が終わると、いつもぴょんと壺の中に跳び込んでいった。市場でこのことを見た人はいなかったが、費長房だけは、楼上から見ていて不思議に思っていた。そこである日、費長房は老人のもとへ行き、酒と肉を差し出すと、老人は「そなた、明日もう一度来なさい」と言った。翌日費長房は老人を訪れると、壺の中に一緒に入れてくれた。そこには、きらびやかな御殿が立ち並び、旨い酒と美味い料理が満ち溢れていた。
というお話です。
言葉の解釈は、
「酒を飲んでこの世の憂さを忘れる楽しみ」
です。
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